今月は計10回、第九を弾きます。今年は久々に多い。
第九については皆さんの方が寧ろ詳しいと思います。自分はあまり聴きにはいかないから。ベートーヴェンはいざ自分で弾いていると、なかなかポリフォニックに、全体を捉えながらは弾けません。かなり能動的な曲なので。
なので客観的に聴いて初めて感じる事の方が多いでしょう。また第九のI様の様に3楽章まで合唱担当として待ちながら聴いていると感じるものもまたあると思います。
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そんななか、最近に「興味深いなぁ・・・」と思う事。それは第九のティンパニパートです。分かりませんが多々ある交響曲でもっとも「ティンパニの音程を感じる曲」かもしれません。他の楽器とユニゾンにもなったりしますが結構ティンパニだけが「レ」の音を叩いたり、弦楽四重奏のビオラパートのような出方をしたり。大勢のvnの後にティンパニが対等に絡んだりするのです。完全な「音程のある1つのパート」扱いです!(あれ、打楽器奏者に失礼!?)
そして面白いのが2楽章。ニ短調なのですが(d-moll)、ティンパニが叩くのはひたすら「ファ」だけなんです。第三音。ニ短調なのに主音の「レ」の音を一度も叩かないのは面白いと思いませんか?例えば2楽章冒頭、「レーッレレ!ラーッララ!」と弦楽器が弾くとそれも受けてティンパニが「ファーッファファ!」と叩き、また弦が「レーッレレ!」と締める訳です。別に「レ」の音が出ないからではありません(笑)、それが証拠に1楽章は「レ」も「ラ」も出て来ます。
・・・とすると、「ファ」だけ叩くとどんな効果があるか・・・というより「レ」を叩かない事と絡んでの効果ですね。弦の「レ」と一緒に「レ」を叩けばその和音は安定する訳です。それが「ファ」を叩くと・・・なんとも重心の高いといいうか、定着・安定しない響きになります。それによって推進力が生まれます。また全体の楽章に対する布石としての効果もあります。これは後ほど。
1楽章は「レ」と「ラ」ともう一個(なんだっけ?スコアが行方不明なので)ですが、なんとなく印象として「レ」より「ラ」が残ります(主観ですが)。それは「レ」をニ短調の1度、主和音の時に叩いている事が少ない。下から「レファラ」の和音より「ファラレ」のときや「ソシレ」や変ロ長調の「シレファ」の時に「レ」を叩いている事の効果の方が印象に残り、転調の推移に大きく影響を与えているように感じます。因みに3楽章、変ロ長調のティンパニは「ファ」と「シ」のみです。
そして4楽章(ニ短調、ニ長調)になると急に、というか殆ど1度、主和音「レファラ」の時に「レ」を重ねる事が多い。ここで2、3楽章で「レ」を叩いていなかった事がめちゃめちゃ活きてきます。満を持して「レ」を叩くことに因って調性・和音は安定し、聴いている人に安心感や「戻って来た」感、日本人特有の師走感(笑)等を与えるのかな、と今年になって急に気づきました。
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もし、第九が(長いな〜ちょっと退屈かもな〜)と思ったら、ティンパニが何の音を叩いているか、どんな役割を果しているか注目しながら聴くと面白いかもしれません。